この記事の概要
この記事では冒頭で「複雑化し続ける現代の製造業の課題」について述べその後、それを解決するための「メタマテリアルを活用した設計支援」の考え方について解説します。本記事を通して現代の製造業でなぜメタマテリアルの設計が必要なのかを具体的に示します。
複雑化し続ける現代の製造業の課題
現代の製造業は設計/解析/製造が分業化され、たくさんの部品や材料を組み立て複合化し競争力のある製品を生み出しています。設計/製造が複雑になるにつれて設計は特定のエンジニア/設計者に属人化し、新しく競争力のある新規設計が難しくなってきています。
こうした複雑化し続ける設計/製造をソフトウェアを通じて効率的にハンドリングし、属人化することなく共有する「複雑さに対抗する手段」としての設計DX、設計支援が求められています。
しかし、考えてみると複雑になり続けるものづくりには物理的/情報的な限界が訪れることは目に見えています。
物理的にはこの2年間のコロナウィルスで露呈したのは製造業のサプライチェーンの脆弱さが顕著な事例です。多くの製品の製造拠点はグローバルに点在しているために、どこかの工場が停止すれば製品の製造もストップしてしまう事例は少なくありませんでした。この例は、組み立てが複雑すぎる製品の物理的な脆弱さをよく示しています。
情報的な観点では膨大な部品組み立てを前提とした設計(情報処理)の限界が考えられます。複雑な組み立てを必要とする製品の部品(コンポーネント)間の関係をモデル化し効率よく設計するためにはモデルベースドデザイン(MBD)が有効とされています。しかし、MBDでは根本的に新しい設計を考える場合は「どのように製品を構成する」かという上位概念から、具体的な設計に落とし込む構想設計→詳細設計のフローサポートすることは困難です。したがって、従来設計の流用設計ではない根本的に新しく競争力のある製品を生み出すための構想設計→詳細設計は今だに属人的で多くの時間と資本を必要としています。
弊社のメタマテリアルを活用した設計支援の価値
一方、我々が展開するメタマテリアルのエッセンスを取り入れた設計は「複雑さに対抗する設計」ではなく「複雑にすることなく機能を生み出す設計」と考えることができます。前回の記事(2)で紹介した我々の3つの設計事例はどれも、新しい組み立てや製造方法を必要とすることなく、設計を変更し新しく提案することで高付加価値な機能を生み出しています。
- 振動増幅による省電力化(コスト削減)/体感向上
- 動く部品の組み立て削減による高品質化と製造コスト効率向上
- 材料代替設計を通した高機能化/低コスト化/リサイクル性向上/意匠性向上
これら①〜③は全てコストを大幅に上げることなく(時にコスト効率を上げながら)、新たに大きな付加価値を増やしている設計であることがわかります。
Nature Architectsは設計/製造のコストや複雑さと機能/付加価値のトレードオフを一部解消し、複雑化し続けるものづくりを超越し新しい設計を提案し続けていきます。こうした取り組みは製造業の「設計可能な範囲を拡張し新たな機能をモノの中に組み込む行為」であり、我々の社会における役割(ミッション)であると自負しています。このミッションを遂行し続けることで我々は人々の新しいインフラ、ライフスタイルや文化を創出する製品をメタマテリアルの設計から生み出し続けていきます。