この記事の概要
この記事では今の製造業にすぐにでも適応可能な次の3つの実用的なメタマテリアルの設計事例を紹介します。
① 振動制御によるハプティックデバイスの筐体設計
② 可動部品の組み立て削減設計
③ 材料代替設計
メタマテリアル研究と製造業におけるメタマテリアルの違い
メタマテリアル(metamaterial)とグーグル検索すると、複雑怪奇なカタチによって生み出される様々な物理的機能に関する論文がヒットします。これらの発見/発明の背景には3Dプリンタをはじめとした3Dデータを瞬時に物質化する工作機械が各大学や研究機関のラボに普及し研究者がクイックに設計/解析、試作/実験を行う環境が整備されたことが大きく影響しています。しかし、このようなアカデミックなメタマテリアルを産業応用する場合には当然3Dプリンタが必要となるため、殆どの場合で量産ができません(製造コストが高すぎるため)。一方、先ほど紹介した穴をあけるだけのメタマテリアルは特殊な製造設備は必要なく、従来の製造方法で量産が可能です。実はメタマテリアルには特殊な製造設備なしで量産可能なものも数多く存在するのです。しかし、シンプルな構造でもほとんどの場合は繊細な設計された構造を膨大に設計検討しなければ所望の機能を得ることができません。
Nature Architectsでは従来の製造設備で量産が見込まれるメタマテリアルを製造制約、コスト、生み出す機能の全ての制約と目的を効果的に膨大な数の設計を検討し提案します。(たまに3Dプリンタを活用した先進的な設計も行います)
我々のメタマテリアル設計は振動遮断、振動伝達、音響遮断、変形制御による動く部品の組み立て削減、をはじめとしたさまざまな物理現象を扱っています。次に具体的に3つの設計事例を紹介します。
① 振動制御によるハプティックデバイスの筐体設計
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従来の振動子を筐体に固定した設計では振動が筐体全体に伝わり、効率よく振動をユーザーに届けることができませんでした。弊社の設計によって筐体に振動増幅構造を組み込み、特定の部位のみを振動させることによって振動を増幅してユーザーに届けることが可能になります。そのため、
アクチュエータの消費電力を半分以下に抑える*
振動による体感の向上
電池の小型化、アクチュエータを低コスト化
などが見込めます。こうした付加価値を特殊な製造や部品組み立てを用いることなく、筐体設計を変更し従来の製造設備を変更することなく実現することができます。
② 可動部品の組み立て削減
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従来製品では10パーツ以上の組み立てを必要とするジョイスティッを射出成形を前提としても3〜4パーツに組み立てを大幅に削減し、耐久性向上、精度向上、製造コスト効率の向上を狙った設計を提案しました。
③ 材料代替設計
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従来はゴムやエラストマーを必要としていた柔軟性をプラスチックで代替する設計を行います。具体的にはオフィスチェアなどのクッション部分を樹脂一体のハニカムで構築し体圧を効率よく分散する柔軟性を実現しました。材料を適切に代替することで、低コスト化、成形性向上による意匠性の向上、リサイクル性の向上、軽量化などの付加価値を生み出すことが可能です。