JP EN
(1)陰関数モデリングをやってみよう

(1)陰関数モデリングをやってみよう

(1)Let's try implicit function modeling.

弊社は、形状処理技術、機能計算技術、設計技術を活用して様々なプロダクト開発を行っています。 本記事では形状をモデリングする手段の一つである、陰関数モデリングについて説明をします。

Our company develops various products utilizing shape processing, function calculation, and design technologies. In this article, we explain Implicit Function Modeling, one of the means of modeling geometry.

新谷国隆

Kunitaka Shintani

2023,05,12 2023,05,12

はじめに

本記事では以下の2部構成で、陰関数モデリング(Implicit Modeling)の説明・実演をしていきます。

  1. 陰関数モデリングに関する説明、TPMS(Triply Periodic Minimal Surface、三重周期極小曲面)によるモデリング
  2. 形状を引数とした陰関数によるモデリング

モデリングには主にRhinoceros-GrasshopperのプラグインJellyfishを使用しています。

第1章では陰関数モデリングの説明と、TPMSによる様々なモデリングを行っていきます。

陰関数モデリングとは?

y = f(x)のように変数の一方について解かれた形式の関数は陽関数と呼ばれます。一方、F(x, y) = 0のように解けた形式で書かれていない関数は陰関数と呼ばれます。陰関数モデリングは陰関数による表現で形状をモデリングする手法です。

例えば円をモデリングするときは、以下のように陰関数を定義します。

F(x,y)=x^2+y^2-R^2

この陰関数をもとにした等式または不等式で領域を定義してモデリングを行います。

例えば上記陰関数においてR=5として、F(x,y)=0の領域に形状を生成するとxy平面に以下のような円が生成されます。(可視化の都合上、円に厚さを持たせています)

F(x,y)\leq 0とすれば内部が充填された円となります。

F(x,y,z)=x^2+y^2+z^2-R^2< 0とすれば球となります。

陰関数モデリングの利点として、ブーリアン演算(形状同士の足し算や引き算)も陰関数で表すことができ、演算が失敗しにくい点があります。

例えば、陰関数F_1<0,F_2<0により定義される2つの形状G_1,G_2があったときに、陰関数F=\min(F_1,F_2)<0で表される形状はG_1G_2を足したもの、陰関数F=\max(F_1,-F_2)<0で表される形状はG_1からG_2を引いたものものとなります。

陰関数を用いたモデリング

波状の板

以下のように三角関数の和で陰関数を定義すれば、波状の板となります。

F(x,y,z)=|\cos (k_xx+\phi_x)+\cos (k_yy+\phi_y) +k_zz|-t<0

パラメータk_x,k_y,k_z,\phi_x,\phi_yを連続的に変化させれば、形状が変化していく様子が見て取れます。

TPMS

z方向にも三角関数で変化する陰関数とすれば、TPMSの一種であるSchwarz Pに厚みを持たせた構造となります

\text{Schwarz P}:F(x,y,z)=|\cos x+\cos y+\cos z +s|-t<0

他にもよく陰関数モデリングの例としてGyroidやSchwarz Dがあげられますが、それぞれ厚みを持たせた陰関数表記と形状は以下のようになります。

\text{Gyroid}:F(x,y,z)=|\sin x\cos y+\sin y\cos z+\sin z\cos x +s|-t<0
\text{Schwarz D}:F(x,y,z)=|\sin x\sin y\sin z+\sin x\cos y\cos z+\cos x\sin y\cos z+\cos x\cos y\sin z +s|-t<0

アイキャッチの画像はGyroidに厚みを持たせ、Nature ArchitectsのロゴNに割り当てたものです。

同様にSchwarz P, Dも容易に割り当てることができます。

TPMSの陰関数を拡張したモデリング

TPMSの陰関数を拡張していくつかモデリングをしていきます。

変化のスケールを変える

Gyroidの陰関数に、x,y,z方向の変化のスケールを決めるパラメータk_x,k_y,k_zを導入し、k_x,k_y,k_zに異なる値を設定すれば各方向の周期を変えることができます。

F(x,y,z)=|\sin k_xx\cos k_yy+\sin k_yy\cos k_zz+\sin k_zz\cos k_xx +s|-t<0

厚みを連続的に変える

また、厚みのオフセットパラメータsを変えると、厚みをつける位置を変えることができます。

ここでパラメータsを空間座標によって変わる関数にすると、厚みをつける位置を連続的に変えることができます。

F(x,y,z)=|\sin k_xx\cos k_yy+\sin k_yy\cos k_zz+\sin k_zz\cos k_xx +s(x,y,z)|-t<0

同様に厚みを決めるパラメータtを関数とすれば、厚みを変化させることができます。

円筒座標・極座標でGyroidをつくる

座標系を円筒座標・三次元極座標に変えてGyroidの陰関数を定義すれば、円筒状・球状にGyroidを割り当てることもできます。

F(r,\theta,z)=|\sin k_r r\cos n_{\theta}\theta+\sin n_{\theta}\theta\cos k_zz+\sin k_zz\cos k_rr +s|-t<0
F(r,\theta,\phi)=|\sin k_r r\cos n_{\theta}\theta+\sin n_{\theta}\theta\cos n_{\phi}\phi+\sin n_{\phi}\phi\cos k_rr +s|-t<0

異なるTPMSを補間する

異なるTPMSの陰関数を足し合わせて新しい陰関数を作ることで、中間形状を作ることもできます。

\text{Gyroid}:F_G(x,y,z)=\sin k_xx\cos k_yy+\sin k_yy\cos k_zz+\sin k_zz\cos k_xx
\\
\text{Schwarz D}:F_D(x,y,z)=\sin k'_xx\sin k'_yy\sin k'_zz+\sin k'_xx\cos k'_yy\cos k'_zz+\cos k'_xx\sin k'_yy\cos k'_zz+\cos k'_xx\cos k'_zy\sin k'_zz
\\
F(x,y,z)=|aF_G(x,y,z)+(1-a)F_D(x,y,z)+s|-t<0

混合パラメータaを空間座標によって変わる関数にすれば、GyroidからSchwarz Dに連続的に変化させることができます。

最後に

本章では陰関数モデリングの説明と、TPMSによるモデリングの実演をしてきました。

次章では、形状を引数とした陰関数によるモデリングについて解説します。

Writer

チーフエンジニア

Chief Engineer

新谷国隆Kunitaka Shintani Kunitaka Shintani

名古屋大学大学院工学研究科マテリアル理工学専攻卒業(修士)。精密機器メーカー研究開発部門において解析業務に従事。2020年にNature Architectsに参画。数式が好き。

採用インタビューはこちら

Graduated from the Graduate Schoool of Engineering, Nagoya University (Master of Engineering). Joined Nature Architects in 2020. He loves mathematical formulas.

Kunitaka Shintani

Related Topics

Up Next

ピクセルを滑らかなカタチに。~marching squares法~

ピクセルを滑らかなカタチに。~marching squares法~

Making pixels smoother. ~Marching Squares method~

今回のテーマは「marching squares法を用いたピクセル画像の境界処理」です。 格子上で取得されたスカラー場の情報から、人の目から見て滑らかで自然な境界線、境界面をどのように作成するか。 そのアルゴリズムを理解しながらGrasshopperで実装し、様々な形状への適用をもって評価します。

The theme of this article is "Boundary processing of pixel images using the marching squares method." How can we create boundaries and interfaces that look smooth and natural to the human eye from the scalar field information obtained on a lattice? We will understand the algorithm and implement it in Grasshopper, then evaluate its application to various shapes.

山本雄大

Yuta Yamamoto

2025,03,26 2025,03,26
獺と鮪で行う木造住宅の耐震設計

獺と鮪で行う木造住宅の耐震設計

Seismic Design of Japanese Wooden Houses by Otter and Tunny

日本における住宅の多くは木造であり,その設計には耐震性や耐風性を考慮した構造計算が不可欠です。 特に低層木造住宅では,建築基準法に基づいた壁量計算や偏心の検討が重要な要素となります。 本記事では木造住宅の構造設計における基本的な考え方を整理するとともに,Grasshopperを活用した低層木造住宅構造設計の最適化について紹介します。構造設計に携わる方や設計手法の効率化に関心のある方にとって有益な内容となるはずです。

Most houses in Japan are constructed of wood, and structural calculations that take into account earthquake and wind resistance are essential for their design. Especially for low-rise wooden houses, wall volume calculations and eccentricity considerations based on the Building Standard Law are important factors. This article summarizes the basic concepts in structural design of wooden houses and introduces the optimization of structural design of low-rise wooden houses using Grasshopper. It should be of interest to those involved in structural design and those interested in improving the efficiency of design methods.

鈴木一希

Kazuki Suzuki

2025,03,07 2025,03,07